幼児教室PAL パル・クリエイション

   
パル便り

パル便り「2012年度 5月号(チャイルド)」

 遅い春がやっと来たと安心していたら、急に寒さが戻ったりで、なかなか体が緩みませんね。早く絶対の暖かさの中でホッとしたいものです。でもこんなことを感じているのは大人ばかりで、子どもは体操の最中早くも暑がっています。子どもにとっては、春の陽気のようです。

 その体操についてですが、昨今の大人の皆さんの幼児体操への認識は、無意識的になのか、オリンピックの体操種目的なものの練習をイメージされているのではないかと感じることがあります。真剣に模範の型を見て、どこに注意したら良いかの説明を聞き逃さず、粛々と練習することを望まれている様な・・・ですから、”ちゃんと聞いていない” とか、” 順番を守らずふざけていたりする” といった不満がアンケートに見かけられたりします。これは幼児についての妥当な指摘なのでしょうか。

 子どもが立つのは1才前後。個人差もありますが、4月時点で1才半が目安のプレイリトルの子ども達は、まだ歩くのも、ましてや走るのも不安定です。
リトルクラスでも、4月時点では走るのがぎこちない子はたくさんいます。その子達に一年間様々な動きを繰り返させることで、翌年には見違える程滑らかに走ることが出来るようになります。この経験が足りないと、3才児もしくは4才児になってもひざの屈伸が伴わない、突っ張ったような走り方をする子もいます。ましてや 急に駆け出す、急に止まる、急に方向を変える、踏んばる等の動作に至っては、年長児でも困難な子どもが多いと思います。大勢の仲間と外で活発に活動する子なら可能ですが、現状ではそう出来ない子が多いようです。経験不足を補うのはパルの役目でしょうが、それは一足飛びに体操種目を習得することではないのです。歩き始めの時、お母さんは赤ちゃんに歩行訓練をしたでしょうか。赤ちゃんに訓練は通用しませんよね。強要されなくても赤ちゃんは毎日飽きることなく、立ち上がる、一歩を踏み出す、しりもちをつく、を繰り返し、日に日に一歩が二歩にと進んでいき、やがてあれよと云う間にどこにでも歩いていってしまうようになりませんでしたか。基本的な身体能力を蓄えるべき幼児期の子どもの情緒は、この歩行し始めの時期となんら変わりがありません。ただ、一人で体を動かすのではなく、人の中で適応して体を動かすことが必要な時期です。ですから仲間との関わり遊びが必須です。本来は原っぱや公園で大勢の子どもが、自分達の意志で遊びを選択し、長時間飽きずに過ごすのが理想でしょうが、その場所も仲間も手に入れにくくなったのが今です。偏った動きの練習ではなくて、どんな状況にも対処出来る動きの獲得がまずは大事なのです。

 幅の狭いパルの教室で、子ども達を2組に分けて、両端からヨーイドンでダッシュするのを見学日にお見せすることがあります。子どもは楽しんでいるのですが、お母さんの中には危ないのではないかと思われる方もおられます。しかし一度たりとも正面衝突をしたことも、ぶつかって片方が倒されたと云うことも起きていません。危険回避の察知は、経験しておかなければ身につかないし、大きくなってからでは、万一ぶつかった時の衝撃は半端なものではありません。

 子どもが自在に体を動かすという状況はどんな場合でしょうか。指図され、管理されている時でないことは間違いありません。目の前の状況に熱中して、楽しんで体を動かすのでなければ、自由自在に体は動きません。自由に体が動いて、コントロールがつくようになったら、その上で専門的な運動が可能になるのです。お母さんの中には、小学校受験の際に礼儀正しく運動の考査を受けて欲しいと望んでいらっしゃる方もいるかもしれません。だからといって、一挙手一投足に目を光らせて子どもを指図管理したとしたら、肝心の伸び伸びした動きは期待できないでしょう。しかもきちんと場所をわきまえられる精神年齢に達した子なら、ここぞと云う時その場に適した礼儀やルールは読めるはずで、早くから運動の際のマナーの練習で子どもを縛ることは無意味です。

 パルの体操は、子どもが楽しく熱中出来るよう、そして知らぬうちに様々な
要素が身につくようにプログラムしてあります。子どもを野方図に動かしているわけでは決してありません。そして更に大切な、子どもとの信頼関係の中で進めていくことを心掛けています。信頼無くして、どうして楽しく熱中出来るでしょうか。

 今年度も正規の夏合宿は取り止めます。まだまだ地震への不安が大きい中で、
遠い場所に自然を求めることが出来ません。ですが、今年全てを見送ってしまうと、今年の年長さんは全くチャンスがなかったことになります。それでは余りに不公平なので、今年なりの夏イベントを企画することにしました。宿泊はしませんが、通常の夏合宿の活動は同量盛り込むつもりです。別紙にてご案内を差し上げますので、是非ご検討ください。年中、年長が対象です。