幼児教室PAL パル・クリエイション

   
パル便り

パル便り11月号(チャイルド)

 ここ何年か、年長の造形プログラムで絵画の取り組みに工夫をしている点があります。そもそも生活絵画やお話の絵というのは、子どもが描きたくて描くタイプのものではありません。たいがいは受験準備で描かされることが多いかと思います。嫌々練習させられて、ここが違うの、あそこが悪いのと云われ、どんどん絵を描くことが憂鬱になる子どもが出来上がります。絵の表現に楽しさやエネルギーが感じられなければ、たとえ隅々まで丹念に塗り込めるテクニックがあっても意味がありません。仕方なく描かれた絵には、よくカチカチに固まった人間が登場します。たとえ横向きの顔が描けたとしても、やっぱり生気に欠けていたりするのです。

パルの年長カリキュラムは1学期から徐々に人の動きに気付かせる内容を入れていきます。それが実を結んで、先週の「行ってみたい所」というカリキュラムを行ったところ、何もサジェストしなくてもみんな工夫して動きのある人を活き活きと描いていました。人を動いているように描こうと工夫する気持ちが、エネルギーとなって表れるのです。描いた子ども達は自分の絵に満足した表情をしています。自ら絵について一生懸命説明してくれます。本来はこのような絵が描けることが(大人の視点では稚拙であろうとなかろうと)子ども自身にとっても、ひいては受験用の対策にも必要なのです.

 さて、「想像して描く」に関しては、別の問題があります。「好きなお話の絵」というカリキュラムを行うと、お話自体に思い入れを持っていない子が出てきます。お話を聞くのが好きな子は即座にイメージが広がるようで、すぐに手が動いていくのですが、「お話」に興味を持ったことがない子は途方に暮れてしまいます。観察画のように視覚だけで描く”見たものを描く”のと異なり、想像して描く作業はかなりの記憶力、言語力、統合力が求められます。絵は、技術の訓練をすればよいというものではありません。イメージを自らの心中に広げる行為が先になければ、描く行為には移れません。しかも大人ならともかく子どもには義務でイメージを想い描く等という作業は不向きです。型にはまった絵の訓練はもっと陳腐です。同じような練習している人が沢山いるとしたら、皆同じような絵になりかねないのです。「想像して描く」行為が得意な子どもを作るには、テレビのヒーローに熱中させるだけではなく、たくさんのおもしろいお話を読んであげること、ひとつのテーマについて家族で旺盛に話し合える環境を作ることをお勧めします。