●パルだより10月号 リトル/チャイルド
ある日の年中さん外遊びでの出来事。この日は大塚公園が活動の舞台でした。主に体操1時間のために組まれたカリキュラムを行いました。全力疾走したり傾斜をよじ登ったりした後、紙に書かれた指令に従って指示された場所を見つけ、その場の状況を覚えて帰ってくるというゲームをしました。指令は全部で5つ。中身は次の通りです。
- 石のライオンを探せ
- 噴水を探せ
- きのこの家で座ってくる
- 狐を見つける
- 水が出る井戸を探せ
広い公園でこんな短い指示を出されても、雲を掴むようです。佐藤先生は、「高崎先生にヒントを出してもらおう、よく聞いて!」と、私に振ります。私は「ライオンは階段を登る途中にあります」と、これ又謎の言葉を発します。子どもはわらわらと駆けていきます。このような活動の意図は、一つはたくさん走って持久力をつけるための体操分野の活動ですが、もう一つは言葉によるコミュニケーション力の強化を目論んでいます。「石のライオン」とは壁の飾りに取り付けられたライオンの頭部を指すのですが、戻ってきた子ども達にどんなライオンがいたのかを聞くと、みんなで言葉を少しずつ継いでやっと説明にこぎつけるといった程度の話ぶりでした。4番目の指令「狐を見つける」はお稲荷さんの狐を指すのですが、私のヒントは「赤い鳥居の先にある」でした。子ども達は「赤い」と「鳥居」のうちの「赤い」を頼って行動したらしく、「鳥居」だけでは辿り着けなかったかも知れません。戻ってきた子ども達の答えは、「神様があった。狐が2匹いた。」でした。
言葉は体験を通して増えていくものです。同じものを見ても、ただ見るだけの場合と、疑問を口にしたり自ら説明を試みたりするのとでは、語彙獲得には雲泥の差が出ます。私は朝よく、登園途中の親子を見かけますが、子どもの話に「ふーん、うん? そうなの? 」だけしか発していないお母さんが結構多いように感じます。このような返事しか得られないと、子どもはだんだん話すことを諦めてしまうかも知れません。でも本来登園途中という時間は、親子の貴重なコミュニケーションタイムとなりえます。屋内にいる時より屋外で親子2人でいる時の方が、集中して会話することができるのです。
9月の第3週の年長の造形は、「共同ゲーム作り」でした。コミュニケーションを必要とするカリキュラムとしては最もハードなものだと思います。3〜4人でグループを作り、まずどんなゲームを作るか話し合います。そしてお互い譲歩し合いながら作りたいゲームを決定します。その後たくさん用意された材料の中から自分たちに必要な材料を選び取り、実際にゲームに必要なアイテムを制作します。そして最後はゲームのルール決めを全員で行い、ルール表を書きあげます。年中外遊びの一年後の姿が見られるわけですが、彼等には言葉の発達もさる事ながら、ゲーム作りのような取り組みにも果敢に取り組む意志が育っていました。そしてゲーム作りを成功させるために足りない語彙もなんとか補って皆で話し合い、合意に向けて努力できるようになったのです。パルは子ども達のこうした意欲を高める為の援助を授業を通して日々続けていますが、言語に関しては最も会話を交わすチャンスを持っているのはご両親ではないでしょうか。ですからお願いしたいのです。単なる指示(早く食べなさい、もう寝なさい、のような)ではない、言葉のキャッチボールになっている会話をたくさんして欲しいのです。これは年少さん、リトルさんにも言える事です。年長になったから突然会話を始めよう、ではありません。「ママ」と言えた時からずっと継続して言葉は発達を続けています。
少・中幼稚園受験も目の前に迫ってきました。質問に対する模範解答を覚えさせたり、急に行儀良くするよう説得したりすることは、あまり役に立たないでしょう。逆に子どもの心は硬直するでしょう。一方的に自分の言いたいことを放つのではなく、言葉のやり取りが楽しくできるようにしておくことのほうが、どれほど役に立つか知れません。
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